電話
いつもたいてい一ヶ月に一度は、日本の実家の母から電話がある。
しかしここ二・三ヶ月、全然音沙汰が無かった。
電話代をケチって私からはめったにかけないのだか、あまりの静けさに不安を感じ私の方からかけてみた。
トゥルルルル・・・・トゥルルルル・・・・カチャッ。
「もしもし」と太い声。
父が出た。たいてい母が電話を取るので嫌な予感。
もしや、母は病気で入院中とか!?
「あ、お父ちゃん、元気?」
「あーどちらさんで」
しばらく声を聞かせてないせいか、はたまた年のせいか、娘の声も忘れてるよ。
「ワタシよ、ワタシ」
「おぁ~まっこかぁ」
父は私を呼ぶとき、誰もそう呼ばないのに‘まっこ’と呼ぶ。本当は『子』がつく名前をつけたかったらしい。
「お母ちゃん、いる?」
ちょっと緊張しながら聞いてみた。
「母ちゃんか・・・・母ちゃんな・・・・・・カラオケ行っとるわ!」
「え~カラオケ~!!」
「近所のじぃさんばぁさん連中が集まってな、町内会館でカラオケやってんだわ」
はぁ~そうですか~カラオケですかぁ~。
まずまず元気だったんですね。良かった良かった。
年寄りの二人暮らしなのだが、母はけっこう町内会の行事に参加したり、市主催の温泉旅行なんかに参加しているらしい。
夫の父ほどではないが、こちらも偏屈頑固じじぃの私の父は、人と接するのが好きじゃないらしく一人で居る方を好む。
父とは昔から会話が弾んだためしがなく、電話といっても何を話していいかわからない。
なので、そういう時は天気のハナシに限る。
「今年の夏は暑かったんだってね~。そっちもかなり暑かったの?」
「あ~、暑かった暑かった、猛烈に暑かったなそっちも、異常に暑かったか?」
異常にと言われても、年中暑い国だからねぇ。
「普通に暑かったよ、というか今も暑いよ」
「おぉ、そうか、そうだったな」
次の日
「昨日電話くれたんだって~!」
との母の方から電話がかかってきた。
たいして用事があるわけではないのだけど、弟夫婦がどうしただたの、嫁さんのおとっさんがどうしただのと、たわいのない会話で終了。
便りがないのは元気のしるし、と言いたいところだけど、なにぶん年寄りだからね。
いつ何が起るかわからない。
これからはこっちからもちょくちょく電話してみよう、とすこ~し思ったのでした。