洗濯と読書の日々

インドネシア在住50代主婦 7人家族 猫6匹

女医の病状説明を一人で聞いた

集中管理室に移動する前に、
CTスキャンを撮りに行きますと看護師からお呼びがかかり、
ベッドごと階下にあるCTスキャン室へ降りた。
しかし、CTスキャン室の前には、義父と同じようにベットに横たわったままの患者さんや車椅子の患者さんが、列になって順番待ちをしていたので驚いた。

こんな所で待つくらいなら、
頃合を見計らって呼びにきてくれても良さそうなのだが、
インドネシアだから仕方がない。

順番待ちをする廊下は半屋外で風通しは良いのだが、
暑い。そこで一時間近くも待たされた。

無事CTスキャンを撮り終え、部屋へ戻ると、
すぐに集中管理室へ移動させられた。

冷房がよく効いた大きめの部屋に、患者用のベッドが二つ。
事務室用みたいな机の前には、看護師が座ってなにか仕事をしていた。

窓側にはすでに患者さんが入っているらしく、
付き添いの家族が2~3人、床にゴザを敷いて座ったり横たわったりしていた。
真ん中でカーテンで仕切られているので、
あちらの家族と顔を合わすことはなかった。

集中管理室でも、家族の付き添いが可能だなんて、
日本では信じられないだろう。
それでも小さな子供の入室は禁止になっていて、
義弟は子供たちを部屋に入れて、看護師に怒られていた。

集中管理室といっても、モニターに血圧とか心拍数を反映させ、
様子をみるだけ。
この時点ではモニターに表示された数字は安定しており、
というか説明がなにもないので、その数字が平均なのかどうかも素人にはなにもわからなかったのだが。

この集中管理室に入ってからは、義父は眠ってばかりで、
家族の呼びかけにもあまり反応しなくなっていた。


翌日の金曜日、朝、私が病室に入ってしばらくすると、
昨日の女医が出来上がったCTスキャンの画像をもってやって来た。

「ご家族の方?あぁ、お嫁さん、
患者さんの症状伝えますから、あとでご主人に伝えてくださいね」
と昨日よりは幾分柔らかな表情で言った。

その時付き添いは私一人だけだったので、
女医の言葉をあとでみんなに伝えなければならないから、
一言も漏らすまいと、必死に耳を傾けた。

だが、女医が発した言葉はそれほど多くはなく、
私でも理解するのに苦労はなかった。

「右の脳が全部白く写ってますね、これはもう危ない状態です」

簡単にまとめると、それだけを女医は言って去っていった。


一人残された私は茫然としてしまった。
すぐに夫にメールをし、

女医が言った言葉で、一つだけ意味の分からない単語があったので、
それも一緒に訊いた。

なぜか女医は、話の最後に私の目をみながら、ゆっくりとこの言葉を発したのだ。
「fatal」
「それどういう意味ですか?」と訊きかえすのもなんなので、
曖昧に頷いた私だった。

夫からの返事はすぐ来た。
「今会議名中。fatalは重症・危篤という意味」
「・・・・・・」

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